6月3日(土)に研究授業・検討会を実施しました。
今年度は中学1年の授業を対象とし、担任教員が国語授業を行いました。ブダペスト日本人学校より中学部国語担当の教諭にお越しいただいたほか、補習校の教員全員と運営委員の数人が授業を見学しました。
国語教科書の教材は「漢字の組み立てと部首」が扱われ、担任教員のさまざまな創見と工夫が発揮されました。
海外で暮らす補習校児童・生徒の場合、日常生活で漢字に接しないことも多く、テストの暗記で多数の漢字を形として(「へん」や「つくり」などと字との関係を理解しないままに)覚えるだけなので、その後すぐ忘れたままとなり、未知の字や読み方への応用も利かず、苦手意識につながる――このようなことは、学年が進むにつれて多くの補習校でしばしば見られる問題で、本校においてはとりわけ改善すべき重要な課題です。
研究授業では、こうした一般的な問題も踏まえ、漢字の成り立ちや組み立ての学習のため、知的好奇心を刺激し、楽しく漢字に興味を持てる授業がめざされました。PC画面を教壇のスクリーンに映して、「漢字仲間クイズ」や教科書の文章から「部首」の特徴を理解し、自由な発想で創作漢字に挑む試みなど、非常に充実した内容でした。生徒からの活発な発言もあり、静かで優しく丁寧な言葉で行われる授業には、日頃からの生徒の安心感と積極的な参加意識が見て取れました。
授業後の検討会では、担任教員による総括のあと、まず日本人学校の教諭から所見を伺いました。行き届いた観察にもとづく的確な指摘はもちろん、広い読書体験を通して「国語」の言葉に深く親しまれてきた知見と、つねに子どもの傍らに立とうとされる方ならではの指導の工夫が窺えて、学ぶことが多いものでした。各教員からも非常に活発な意見が出され、謙虚ながら鋭く明確で有益な指摘もあり、有意義な研究授業・検討会となりました。
かな・漢字・音訓の書字システムは、言語の「国際的」な生成と多様性を文字の表面にあらわに表している点で、「日本語」のもつ特異さのひとつです(世界のどの言葉もそれぞれ特異であるなかで)。それだけに、多言語環境での漢字の学習は、面白さとともに困難もつきまといます。漢字の学びをどのように実践するかは、国際的な環境の子どもたちが「国語」の文章読解をそれぞれのやり方で深く体験し・多様な「言葉の力」を解き放っていくことへ向けて、補習校教育の成否が問われる、きわめて大きな課題です。今回の授業・検討会は、その課題に向き合うためのささやかな一歩をしるすものとなりました――これを確認して、今年度春の研究授業の報告といたします。
(研修担当教員寄稿)